増加する在留外国人に対する日本語教育の体制整備に向け、自民党文科部会は5月26日、日本語教師の能力を証明する国家資格や、日本語教育機関の水準を保障する認定日本語教育機関の創設を求めた提言案を了承した。党政調審議会を経て、政府に対応を求める。提言案の取りまとめにあたったプロジェクトチームの宮内秀樹座長(衆院議員)は「日本語学校の仕組みは、誰が責任を持ち、どのような形で管理するのか、あいまいになっている。このままでは、日本語教師も定着しない。認定制度によってちゃんとした位置付けの日本語学校を作るべきだ」と述べ、早ければ今年秋の臨時国会にも政府が法案を提出すべきだとの考えを示した。
提言では、昨年12月末現在、国内の在留外国人が約276万人となり、日本語学習者も2019年に約28万人と増加傾向が続いている現状を踏まえ、「日本語教育が質・量の両面から充実し、外国人人材が安心して『留学』『生活』『就労』ができる施策の推進が必要」と強調。
政府に対して、▽日本語教師の国家資格制度の創設▽日本語教育機関の水準の維持・向上を図る認定校制度の創設--を早期に実現するよう、取り組みを求めた。
日本語教師の国家資格制度については、「日本語教師の処遇や社会的認知を高め、活躍できるような国家資格の創出を行う」と説明。そのために必要な養成・研修・試験などのシステムの構築も求めた。
認定校制度の創設では、日本語教育の質的量的な充実を図るとして、大学に日本語教育を行う別科を設置することや、法務省の告示によって運営されている日本語教育機関などを対象に、新たな仕組み作りを検討するよう促している。
また、在留外国人が増えているのに、日本語教育機関が足りない「日本語教育の空白地帯」の解消を目指し、▽自治体や産業界、民間支援団体などが連携して地域の日本語教室や人材の育成・研修などに取り組む▽日本語のレベルを示した 「日本語教育の参照枠」を使ったモデル教室運営など、専門性の高い日本語教育機関と連携した取り組みの強化▽これらを推進するために必要な国の予算措置、地方財政措置を行う--ことを挙げた。
宮内座長は「今の日本語学校は、法務省の告示機関で、文科省が何かあったら意見を言うような、あいまいな形になっている。誰かが責任を持って、どのような形でしっかり管理するのか、仕組みを作っていかないと、いつまでたってもきちんとしたものができない。そこが一番大きな問題だ」と指摘。
「文科省がちゃんと日本語学校の実態を把握して、ちゃんとやっていない日本語学校があれば認定を外すようなことをしないと、日本語教師だって定着しない。いまは日本語学校の実態はちゃんと把握できていないし、把握する権限もない。これでは、健全経営を図ることもできない」と続けた。
その上で、「これは重要だが、そんなに簡単な話ではない。だから政治がしっかり入って、いろいろな人の話を聞いて、いろいろな省庁を連携させていく形を作っていかないといけない」と述べ、新制度の整備に意欲をみせた。
日本語教育については、19年6月に「日本語教育の推進に関する法律」が成立。文化庁の調査研究協力者会議が昨年8月に日本語教師の資格や日本語教育機関の分類と評価制度について報告をまとめた。同庁では法制化の検討を進めており、近く新たな有識者会議をスタートさせる。
1.日本語教師に関する資格制度創設および日本語教育機関の水準の維持・向上を図る制度創設の早期実現
2.日本語教育の空白地域解消を目指した地域日本語教育の総合的な体制づくり