25年共通テストの試作問題公表 「国語」は大問1問追加

25年共通テストの試作問題公表 「国語」は大問1問追加
広 告

 大学入試センターは11月9日、新学習指導要領への移行を踏まえて2025年に大きく変更される大学入学共通テストの、問題作成の方向性と試作問題を公表した。知識の質や、思考力・判断力・表現力を問う工夫をいっそう重視する。「国語」では、言語活動の過程を重視した大問を1問追加し、試験時間を10分延長。「地理歴史」「公民」では、必履修科目と、それを学んだ後に履修する選択科目を組み合わせて6つの科目を出題する。また、新たな出題教科として「情報」が追加される。大学入試センターは今後、大学生を対象としたモニター調査や高校関係者へのヒアリングを行い、内容・分量・程度などの調整をした上で、来年6月に正式な問題作成方針を公表する予定。

「各教科・科目の特質に応じた学習の過程を重視」

 新学習指導要領への対応を踏まえ、25年実施の共通テストでは、新たに教科「情報」が追加されるほか、「地理歴史」「公民」は新学習指導要領の教科・科目の内容に基づき再構成するなどの大幅な変更が行われる。問題作成の方向性として、大学入試センターは「従来の方針を重視しつつ、趣旨をより明確化し、新学習指導要領に対応する」としている。

 具体的には▽知識の質、思考力・判断力・表現力などを重視するとともに、教科横断的に育成する言語能力、情報活用能力などにも留意する▽知識・技能や思考力・判断力・表現力などを適切に評価するため、各教科・科目の特質に応じた学習の過程を重視し、問題の構成や場面設定の工夫を重視する▽出題の工夫を一層重視しつつ、多様な受験生が十分に力を発揮できるよう、出題の構成や内容・分量・表現などに配慮する――などの点を挙げている。

 各教科・科目の変更点としては、まず「国語」で言語活動の過程を重視した大問が1問追加され、試験時間が80分から90分に延長される。全体としては近代以降の文章が3問110点、古典が2問90点(古文・漢文各45点)となる。新たな大問では「さまざまな資料から読み取ったことを基にレポートを書くといった言語活動を重視し、多様な資質・能力を問うことができるようにする」としている=図表1

「国語」で追加される大問の一例
「国語」で追加される大問の一例

 また「地理歴史」「公民」では、『地理総合、地理探究』『歴史総合、日本史探究』『歴史総合、世界史探究』『公共、倫理』『公共、政治・経済』『地理総合、歴史総合、公共』の6科目の中から1~2科目を選択するが、2科目選択の場合、選択できない科目の組み合わせがある=図表2。大学入試センターの担当者は「受験者が間違えずに選択できるように、さまざまな形でしっかり周知を図っていきたい」としている。

 「数学」は「数学①」「数学②」ともに試験時間が70分(数学②は10分延長)となる。試作問題の「数学①」では、選択問題がなくなり全て必答になっている。「数学②」は『数学Ⅱ、数学B、数学C』となり、選択問題に「平面上の曲線と複素数平面」が加わるほか、現状の2問必答・2問選択から、3問必答・3問選択に変更されている。

 「理科」は現状、「理科①」「理科②」を別々の時間帯で実施しているが、一つの時間帯で実施する。選択できる科目の組み合わせや配点は従来通り。

 「英語」では、リーディング・リスニングの配点や試験時間は従来通り。出題内容は「『聞く』『読む』『話す』『書く』を統合した言語活動で育てた総合的な英語力を測る」としており、リーディングでは「複数の資料を読んで主張をまとめ、論拠を整理する」「書いた英文を推敲する」などの場面、リスニングでは「講義の要点を確認し考えを述べ合う」といった場面が試作問題で扱われている=図表3

図表3 「英語」で出題される、総合的な英語力を測る問題
図表3 「英語」で出題される、総合的な英語力を測る問題

「多様な学習の特性を持った受験生に配慮」

 試験の時間割について大学入試センターは、現段階で「理科」「情報」を一つの試験時間帯で実施する場合のイメージを示している=図表4。それによると、1日目は午前9時30分から(1科目受験の場合は10時40分から)「地理歴史」「公民」、午後は1時から続けて「国語」「外国語」「リスニング」を行い、終了予定時刻は午後6時20分。

 2日目は午前9時30分から(1科目受験の場合は10時40分から)「理科」、午後は1時から続けて「数学①」「数学②」「情報」を行い、終了予定時刻は午後6時。受験上の配慮における試験時間延長(1.5倍)の試験終了時刻は、1日目が午後7時50分、2日目が午後7時25分。

 大学入試センターは今月、得点調整の方法に関する検討状況を公表するとともに、大学生によるモニター調査を開始する。今年度中には各大学が利用教科・科目の予告を行う予定。来年6月ごろには「出題教科・科目の出題方法等及び問題作成方針」を公表し、これが今回示した方向性を踏まえた正式決定となる。出願方法や時間割を示した「実施要項」の公表は24年6月ごろ。

 今回示された試作問題では教科を問わず、複数の資料や対話文を読んで解答するものが多く、大学入試センターの記者会見では、記者から「分量が多いのではないか」という質問が複数上がった。担当者は「今回は、特に学習の過程が特徴的なものを示しており、(受験生に読ませる)資料の量が多いように見えるが、基本的な知識を問う問題もある。ただ、表面的に覚えているだけでは解けない知識の問題もある。本番に向けて、試験としてのバランスをしっかり考えていく」と答えた。

 その上で「設問の問い方一つで、複雑に考えて混乱してしまったり、逆にあまり深く考えず、問題を読まなくても解けてしまったりすることがある。問い掛けの仕方や、一つ一つの選択肢の作り方において、多様な学習の特性を持った受験生に対し、教科の本質的な力を測れるようにしていく。本質的でないところで、文章や資料(を読ませること)で受験生に負荷をかけることは避けたい」と語った。

 大学入試センターが公表した25年度共通テストの試作問題と解答などは、同センターのウェブサイトで閲覧できる。

広 告
広 告